こんにちは。私は、協会よりCCAスペシャルゲストの任を仰せつかっている形本静夫と申します。現在、67歳です。2年ほど前に定年退職し、今はサイクリングを日々楽しむ贅沢?な毎日を送っております。
私のサイクリング歴は、さほど長くなく、今年でちょうど11年目を迎えているところです。もっぱら、センチュリーランやグランフォンドを中心に走り、時折エンデューロレースやヒルクライム(HC)にも挑戦しております。さしたる競技成績はありませんが、去年は富士HCを1時間19分43秒で走りきることができました。
最近はクランク型のパワーメーターをモニターする機会が得られましたので、これを利用して日常のサイクリングの機械的効率を測定したり、心拍数からエネルギー消費量やエネルギーコスト(体重1?を1?運ぶのに必要なエネルギー量)を推定したりしながら、サイクリングを楽しんでいます。
これまでに、自分自身を対象として、それぞれ15?18回ほどの測定で得たサイクリングの機械的効率とエネルギーコストは、3本ローラーの場合が19.6%と0.27 kcal・kg?1・km?1、ロードサイクリングの場合が21.0%と0.34 kcal・kg?1・km?1でした。機械的効率はロードサイクリングの方が、移動の経済性は3本ローラーによるサイクリングの方が、やや優れているという結果が得られています。
ランニングの機械的効率はおよそ25%前後ですので、サイクリングの場合は、それよりは低いようです。機械的効率は、筋肉が収縮するときに分解した化学的エネルギー量と手脚の動きとなって現れた機械的エネルギー量との比率を表したものですので、サイクリングでは、分解した化学的エネルギー量のうち、80%は熱になって体温を上げるのに使われているということになります。
また、エネルギーコストについて言うと、ランニングではスピードに関係なくほぼ1 kcal/kg/kmですので、大ざっぱに言えば、サイクリングはその1/3程度ということになります。言い換えれば、自転車で30?乗るときのエネルギー消費が、10kmランニングするときのエネルギー消費量に相当するということにとなります。しかし、自転車ではランニングのような着地に伴う衝撃がありませんので、走る距離は3倍になりますが、ランニングほどきつくなく運動することができます。
私が複数の人を対象に調べたママチャリ走行時や、エンデューロレース・長距離ツーリング時のエネルギーコストは、およそ0.33?0.38 kcal/kg/kmの範囲にありましたので、私の値は妥当なところかなと思っています。エネルギーコストにご自分の体重と走行距離を掛ければ、サイクリングで消費したエネルギー量をかなり正確に推測することができます。どうぞ試してみてください。
最後になりましたが、私は大学のスポーツ科学系学部で長年運動生理学の教育と研究に携わり、その中で自転車に関する研究も行ってきました。また、自転車競技部の監督も務めてきましたので、必ずしも十分とは言えませんが、みなさんのサイクリングライフに関する疑問にも、そのときの経験を生かして、少しはお答えできるのではないかと思っています。
サイクリングは健康に優れた効果を持つスポーツです。イベント会場でお会いする機会がありましたら、気軽に声をかけて、質問してくださって結構です。
イベントで皆様とご一緒する機会を多く持てれば、と思っております。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
【形本静夫氏のプロフィール】
東京教育大学(現筑波大学)大学院体育学研究科修士課程終了
順天堂大学名誉教授・博士(医学)
日本健康体力栄養学会会長
(2012 Motegi Run & Bike 4時間エンデューロ50歳以上1位になって)