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 グランフォンドレース

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                       CCAスペシャルゲスト 順天堂大学名誉教授 形本静夫

 

 近年、「○○グランフォンド」とか「グランフォンド○○」と銘打たれたサイクリングイベントが全国各地で開催されるようになってきた。

  ものの本によると、グランフォンドは10年ほど前にイタリアで生まれた、との記述が見られる。グランフォンドはイタリア語で「大きな移動」という意味で、長距離を自転車で走ることを言うらしい。一般的には山岳コースをメインとしたロングライドイベント(150?200?)のことを言い、獲得標高も2000mを超える本格的山岳ライドとして設定され、ときには4000m以上になることもあるという。まさに、チャレンジ精神が鼓舞されるイベントだと言えよう。

 私もこのようなグランフォンドに関心を持ち、8年ほど前からいくつかのイベントに参加してきた。しかし、ゴールタイムを計測することはまれで、あってもレースではなく、よいタイムが表彰の対象になることもなかった。また、コースの途中にはエイドステーションが必ず設けられていて、そこで飲み食いするのが常であり、参加者にとっては、タイムはあくまでも余興であり目的ではなかった。つまり長い距離を走る中で登りを楽しむ、それがグランフォンドであると思ってきた。

 しかし、国際自転車競技連合(UCI: Union Cycliste Internationale)主催の今年のグランフォンド世界選手権大会(Gran Fondo World Championship)が9月にオーストラリアのパースで開催されるにあたり、3回目を迎える「ニセコクラシック」が、本年度からそのアジア地区予選大会として公認されたことを知った。開催日は7月10日(日)で、場所はもちろんニセコであった。おそらく、我が国初の本格的グランフォンドレースではないかと思われた。

 要項を見ると、途中にエイドステーションなどはなく、純粋に着順・タイムを競うレースとして行われることが記載されていた。もちろん、通常のグランファンドにあるような細い山道コースなどはなく、舗装された幅の広い公道が用意されていた。ここがよくあるグランファンドとは違うところかもしれない。ニセコは私の生まれ故郷から車で1時間半もあれば行けるので、親族に会う楽しみも兼ねて参加してみることにした。

 レースは年齢によって区分され、50歳未満の者は140?(獲得標高約2400m)、50歳以上の者は70?(獲得標高約1100m)に出場して、それぞれの年齢カテゴリー(19?34、35?39、40?44、45?49、50?54、55?59、60?64、+65歳)で上位25%以内に入れば、世界選手権大会への出場権を手にすることができるという。大会時点で69歳直前であった私は、+65のカテゴリーに出場することになった。

 きつい登りは、リアルスタート直後の約2?、37?付近からの約10?、57?付近からの約3?、65?付近からの約0.6?の4ヶ所であったが、65?以降は登り基調で、ゴール前の300mほども6%ほどの上り勾配となっていた。距離は、ルートラボによれば73.5?であった。

 スタートは、集合場所の広場からまず女性グループを先頭に、50?54、55?69、60?64、+65、オープンの部、の順に出て行くというものであった。タイム計測は、女性のスタート時刻に合わされていた。パレード走行中にその差は縮まり、リアルスタート時には大きな集団になった。しかし、どうしてもあとからスタートしたグループは後方に置かれるかたちになるので、やや不利となる感は否めなかった。

 このレースのポイントは、リアルスタート直後の約2?の登りで先頭集団から遅れない、あるいは遅れてもその後の緩い下り基調で追いつける距離の集団にいることである。膝の違和感で登りの練習が不十分で、かつ後方からスタートを余儀なくされた私はこの登りで50mほど先頭集団から離されてしまった。しかし、その後の下り基調を利用してなんとか集団に追いつくことができた。だが、集団の中で過ごせたのは本格的な登りが始まる37?付近までで、その後は力のなさを思い知らされた。

 登り基調が続く後半は、登坂力に加えスタミナも要求されるが、距離は短いので徹底的な走り込みは不必要かもしれない。ただ、世界選手権大会では105?前後の距離が課されるようなので、世界を目指した場合は別な対策が必要になるかもしれない。

 今回は土砂降りの中でのレースとなってしまったが、幸いスリップ事故に遭遇することもなく、無事レースを終えることができた。+65歳のカテゴリーには、私も含めて6名がエントリーしていて、全員が出走した。中には前年度の優勝者もいたが、運良く2位に6分08秒ほどの差をつけて出場権を手にすることができた。タイムは2時間22分13秒00であった。

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表彰式のあとに知り合いの栗村修さんと

 

 世界選手権大会への出場は諸般の事情で見送ったが、世界大会では+70歳のカテゴリーも実施されていたので、可能なら次年度もチャレンジし、世界の同年代の人たちとレースを一緒に走り交流を深めてみたいと考えている。今回のグランフォンドレースへの出場は、このようなサイクリングの楽しみ方もあることを教えてくれた気がしている。もちろん、ニセコの大会にも、多数の外国人の参加があったことを記しておかなくてはならないだろう。

 レースというと、なんとなく息苦しさを感ずる人も多いと思うが、普通のグランフォンドからエイドがなくなったものだと考えれば気が楽になるかもしれない。ニセコの大会は距離が73?ほどとやや短く、獲得標高(1100m)も手頃で足きりも緩やかなので、出走すればほとんどの人が完走できる。チャレンジを試みてみたい人には、お勧めだと思われる。もとより、ニセコの付近は景勝の地である。余裕があれば、レース後に積丹半島や洞爺湖、支笏湖方面に足を伸ばして、北海道の初夏を思う存分楽しむこともできる。お勧めしたいと思う。

 さて、11月26日(土)には「清和の森サイクリング」が開かれる。このイベントはサイクリングとはなっているが、その距離、獲得標高からすれば、レースではないが、これはもう立派なグランフォンドでないかと思われる。グランフォンド好きの私はここ2年ほど連続して参加しているが、今年も知り合いのサイクリング仲間とともに申込みをした。今は、晴天のもと楽しくサイクリングができることを祈りつつ、その日が来るのを待ちわびているところである。

 

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